新宿合気会web 25号「新年ご挨拶」
新年あけましておめでとうございます。
2025年がスタートしました。
この1年間を振り返りますと、多くの方々がそれぞれの目標に向かって稽古に取り組んでいらっしゃると感じます。
今年も会員各位が、それぞれの合気道に取り組める道場運営を考えていきたいと思っています。運営方針や道場訓は2022年に制定をしました。これを基本方針としつつ、更にその方針を深めていければと考えています。
運営方針、道場訓の中に次のものがあります。
運営方針
「基礎・基本を大切に、最善を尽くし充実しあえる稽古を行う。」
道場訓
- 稽古中は指導員の方針に従い、素直な気持ちで技を掛け合い、術理を学ぶこと。取りは取りの、受けは受けの役割に専念すること。独自の講釈や勝手な稽古を行わないこと。
- 稽古中は必要以上の会話はせず、黙々と稽古をすること。
- 稽古人は基礎動作や基本技への取り組みを重んじること。
合気道を稽古する方々にとって、健康や強靭な肉体づくり、運動能力、体力、柔軟性、バランスといったフィジカル面での向上に期待するというのは共通項だと思います。
当会では最近では若い方の入会も増えてきましたが、これまでは日常的に運動をしてこなかった方が多いです。そういった方々は、体力や柔軟性も身につけ、健康になることで充実した1年を送ることができます。これは極めて重要なポイントです。
合気道の稽古を通じて、体力向上に努めましょう。
私たちは時折、「合気道には力が要らない」という間違った情報に触れることがあります。しかし、そんなことは決してありません。力があれば、どんどん使えばいいですし、体を鍛えてもらっても構いません。技の反復稽古を通じて術理を学び、バランスを身につけ、合理的な技の運用を行えるようになることが日々の稽古の狙いです。「力が要らない」というのは、体の働きを妨げるような無駄な力や筋力を使わないという意味です。
そのためには基礎・基本にしっかりと向き合うことに最善を尽くしてください。
12月の周参見師範での稽古では、手捌きの稽古がありました。また、その中で五指をしっかりと開くことの重要性についてもご説明がありました。稽古というものは非日常であって、動作の一つ一つが非日常ですので、指を開くという単純なことであっても同様に意識をしない限り、なかなか当たり前にできるようにはならないのかもしれません。そこを意識することが肝要です。「意識する」というのは“言うは易く行うは難し”であって、数回程度の意識付けではできるようになりません。
最善とは“全力に近しい”という意味ですが、ややニュアンスには違いがあるかもしれません。寧ろよく考え、よく体を動かすということに近いものだと考えています。特に経験の浅い方にとっては、考える以上によく体を動かして慣れることが重要です。
上級者にとっては稽古において「考えること」が重要となりますが、同時に注意すべき点はフィジカルを軽視した稽古に陥らないことです。稽古中は体をよく動かし、全力を尽くして取り組むことが大切です。武道としての本質を保つためには、力を出し切り、しっかりと体を動かす稽古を積み重ねる必要があります。
道主の近著に次の記載があります。
”人間の体の構造や仕組み、筋肉の働きなどの理論を事細かに研究、理解しようとする方もいます。しかしそういったものの研究の上に技が出来ているのですから、頭で考えるより、まず身体で覚えてほしいと思います。
理屈にとらわれてしまうとかえって体が動かなくなるものです。吉祥丸二代道主は「武道の『研究』をしているのか、武道そのものをやっているのか、そこをはき違えてはいけない」と言われています。
不思議なもので、ある程度年齢を重ねた方々の方がそういう傾向にあるように思います。”
武道研究目的となってしまったり、口頭による教えが中心となるような稽古にはならないようにしていきましょう。特に上級者にとって注意が必要なことです。後輩と稽古していると、次から次へといろいろなことを教えたくなるものです。しかしそれが良くありません。体を動かす稽古が全くできなくなります。
一つのことをアドバイスしたら、その日はそれだけで良いのです。今日はその一つのことをひたすら繰り返すことで、そのことが習得できるような稽古になった方が良いです。あれもこれも口頭助言すると、動きが止まります。また、上級者は最初から口頭説明することなく、気付いてもらえるように自分の技において、主張したい点がちゃんと反映できているかを意識してください。自分ができていないのに相手に口頭説明したところで、説得力はありません。
結局のところ、稽古は黙々とやるべきなんです。しゃべっている余裕は上級者も初心者も本来はないはずなのです。
今年も、フィジカル面を軽視しないよう、身体をしっかりと黙々と動かして、丈夫な身体づくりも兼ねた稽古をしていきましょう。
令和7年 元旦
新宿合気会 会長 長南一樹