「袴を畳む」という文化について

 合気道の道場では、かつてより先輩や指導者の袴を畳む文化があります。当会でも今までこの歴史を踏まえてこの習慣を継続してきましたが、時代の変化を鑑みて当会ではこの習慣の見直しを図ることにいたします。

 

 今後当会では、先輩や指導者の袴を基本的に畳ませないようにします。

 同様に、経験の長い者、段位が上の立場の者が後輩に「袴を畳むこと」を指導したり、推奨することも無いようお願いいたします。


 本来、「袴を畳む」という行為は、弟子が無意識のうちに師匠の袴を畳むものでした。これは指導者への感謝を表す以前に、袴を畳む側に強い師弟関係を意識していることが前提となって行われる、いわば〝無意識の所作〟でした。
 しかし現代において、道場という場の軸が「師匠と弟子」の関係から「指導者と会員」の関係へと変化したことによって、「袴を畳む」という行為はその形式だけが取り残されているように映ります。「袴を畳む」という行為が本来持っていた意義は失われ、もはや時代にそぐわないものとなっているようにも思います。

 道場での行為が時代の流れから逸れているのにもかかわらず、形骸化し固定化することによって仮に無意識的であったとしてもその慣習を会員に〝強制する〟ということはあってはならないことだと考えます。

 道場という人間性向上の場を考え、道場で今行われている習慣や行為についてそれが今という時代との乖離がないかを見極めこのたび判断をしました。このことは、〝歴史を継承していく〟ということと矛盾しないばかりか、寧ろ〝正しく歴史を継承していく〟ための必須条件にさえなるものと考えております。

 但し、自分が指導者に対して、特段の思い入れがあり、師として敬い、常に師弟関係を思っている方が袴を畳んで差し上げる行為を妨げるものではありません。それは個人の思い、考えにおいて自由です。この場合でも、当日の指導者のみに限定してください。


 今まで素朴な感謝の念から先輩や師範の袴を畳んできた会員の方がほとんどだったと思います。しかし、先輩や師範への感謝の念を表すのであれば、袴を畳むことに限らず、他の方法はたくさんあるはずです。

 

 尚、本部道場やその他師範を招いて行う当会主催の講習会においては招かれた先生は来賓ですので、お招きした方々に対するおもてなしとしてその方の袴を畳むことを指示する場合があります。こちらは上記とは別のものとして考えてください。

 

以上、ご理解の程よろしくお願いいたします。

 

新宿合気会 会長 長南一樹

 

新宿合気会

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