新宿合気会web 9号 「ジャカルタ道場での稽古」

 前回インドネシアジャカルタの演武会の様子をご紹介しましたが、今回はジャカルタ道場の日々の稽古の様子についてご案内したいと思います。

新宿合気会グループ、ジャカルタ合気道道場 天恵道場には、3つの道場があります。前回ご紹介した演武会が行われたインドネシア大学を本部道場としていますが、それ以外に2つの道場があり、マヤパダ道場、メンテン道場があります。マヤパダ道場は駐車場ビルの9階、メンテン道場は公園の中にあるイスラム教のお祈り施設隣接にマットを敷いて稽古を行っています。

 天恵道場やその他の合気道組織に限らず、ジャカルタでは多くの武道や格闘技の稽古として、駐車場が利用されています。理由は単にスペースがあるから、施設利用料が安い、または無料だからという点があるためです。駐車場で働くセキュリティに教えるから無料にしてもらう、という交渉もあるようです。

 日本で稽古していると畳がある道場が最初からあるのが当然のように思いますが、これらの道場ではまず「道場を作る」ところから始まります。今回はマヤパダ道場(Gedung Parkir Mayapada Tower)の稽古の様子を見てみましょう。

 

① ご覧の通り駐車場です。数台の車が駐車しています。

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 ② 空いているスペースを見つけます。大抵同じところになりますが、駐車状況によっては稽古場所を変えることがあります。

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③ マットを敷く前にシートを敷きます。マットの汚れ防止です。

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④ 次にマットを敷き詰めていきます。このように1m四辺のマットを縦5枚、横がその時によりますが、10~12枚程敷き詰めていきます。マットの厚さは約2cm程です。

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⑤ 空いたスペースに数枚のマットを敷き、荷物置き場、休憩スペースとします。着替えの部屋はありません。1つしかないトイレで着替えるか、柱の陰や階段の踊り場などで着替えます。 

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 ⑥ マットは駐車場の片隅に整理し保管しています。 f:id:shinjuku-aikikai:20210126233156j:plain

 

⑦ 稽古が始まります。

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 ⑧ 稽古後は時々そのままパーティー会場となり、懇談会が開催されることもあります。

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写真中央眼鏡をかけているのが指導責任者エカ氏。その右隣は長南指導員。

エカ氏の左二人目がブディ指導員、右端はアントン指導員。

 

 日本のように畳やシャワールーム、空調など環境が整備されていなくても、合気道の稽古はどこでもできることが分かると思います。ジャカルタは熱帯モンスーン気候で、季節は雨季と乾季に分かれますが、年中通じて高温です。日本の夏の季節が年中続くのと同じような感じです。駐車場の9階にあるマヤパダ道場では強風が吹けば敷き詰めたマットが飛んでしまうことも、スコールが降れば大雨が入り込んでマットがずぶ濡れになることもあります。しかしそんなことは彼らにとっては日常茶飯事なので、お構いなし。マットが飛べば重しを置いて、濡れれば拭いて稽古を再開します。

 しかしコンクリートに僅か2cm程度のマットを敷いているだけなので、バタバタと稽古するわけにはいきません。投げ飛ばすような稽古よりはじっくりと基本に取り組み練り合う稽古が主体となります。これが天恵道場の最大の特徴、基本の追求です。小手先の技術ではなく、基本への理解、解釈を深めていくというスタイルが彼らの特徴です。そのため彼らは非常に素直で、癖の無い技を行っています。

 皆さんもジャカルタに行く機会があれば、是非天恵道場での稽古に参加されてはいかがでしょうか?きっと温かく迎え入れてくれると思います!しかし気候は暑いのでお気を付けください。

新宿合気会web 8号 「第一回ジャカルタ合気道天恵道場演武大会」

2019年11月、新宿合気会グループであるインドネシア共和国、首都ジャカルタにある「合気道天恵道場」にて第一回目となる定期演武大会が開催されました。

 インドネシアにおける合気道の歴史は意外と古く、1960年代には既にあったようです。その後さまざまな組織が生まれ、今では多数の道場が存在しています。

 日本ではそれぞれの道場が年間行事として演武会を開催することが一般的ですが、インドネシアでは定期的に演武会を開催することがこれまでなかったようです。天恵道場は周参見師範が天恵道場創始者で指導責任者エカ氏と交流があり、長南指導員が2016年にジャカルタに渡り、3年半天恵道場の指導や運営補佐に携わってきました。

 その集大成として2019年11月、演武会が開催されました。日本からは周参見師範、川島指導員が開催の前後1週間ジャカルタに滞在され、稽古指導、特別講習会、演武会にそれぞれご対応されました。

 第一回目のコンセプトは、「最善を尽くそう、だけど頑張り過ぎないようにしよう」でした。第一回目の開催を頑張り過ぎると、二回目、三回目と定期開催のハードルが高くなることを想定し、「なんだ、こんな程度でいいんだ」というレベルを目指しました。それは、開催に派手な演出を施したり、グッズを企画したり、多数の来賓客の招待などをせずに、自分たちとその家族を中心に日頃の稽古の成果と、その様子を家族に知ってもらう、そのことだけに主眼をおいたものとしました。演武会の会場も、単に師範・指導員用に正面に長テーブルと椅子だけを用意し、開祖の写真を置くという非常にシンプルなものでした。高度経済成長真っただ中のインドネシア人は派手を好む傾向がありますが、このコンセプトの同意し皆一丸となって取り組みました。しかしインドネシアの緑豊かなロケーションと相まって、会場は非常に素晴らしい演出を醸し出す結果となり、大いに盛り上がり第一回目としてこの上ない成功を収めることができました。

この演武会の様子は大会前からジャカルタ中の合気道組織が注目していました。大会プログラム含め、運営委員会の在り方などは、この時の新宿合気会の仕組みがインドネシア風にアレンジされて、パッケージ化され各地に伝播され、直後に演武会が開催されたようです。残念ながら新型コロナウィルスの影響で2020年は第二回目の演武会は見送りとなりましたが、稽古は徐々に部分的に再開をしているようです。

 

国立インドネシア大学 周参見師範特別講習会(2019年11月23日)

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※通訳はエンダーさん、長南指導員が担当。

講習会は40名弱の参加があり、周参見師範の基本を中心とした稽古に共に汗を流しました。参加者たちは素直に指導の内容に取り組んでいたのが印象的でした。

 

 

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写真中央周参見師範、左が川島師範、周参見師範右となり天恵道場指導責任者エカ氏、その隣長南指導員、右端から2番目がファルマン会長。後列の大半がインドネシア大学合気道部のメンバー。

 

 

第一回目天恵道場演武大会

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演武をするエカ指導責任者

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周参見師範の演武

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大会ポスター

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天恵道場有段者演武

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ロケーションは最高!

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当日は会員及び家族など、総勢50名ほどの方々が集まりました。

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天恵道場幹部との記念撮影

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写真左から

前列:ファルマン会長、長南指導員、川島指導員、周参見師範、エカ天恵道場責任者、フェブリ指導員、アントン指導員

後列:ムハンマド指導員、ブディ指導員、

 

直会の文化も浸透!

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インドネシアの約9割がイスラム教徒。彼らはお酒を飲みませんのでこういう場では紅茶かコーヒーです。

新宿合気会web 7号 「今こそ稽古の仕方を考えよう②」

 「どうやったら上達するのか?」

それは合気道を稽古している方であれば誰もが常に考えるところです。色々な方法を試したり、先輩や先生に教えを求めたり、自分で本や動画を見てあれこれ試したり、その方法は枚挙に暇がありません。そしていろいろな目新しい技術と出会った時には感動する反面、先生から「基礎動作に取り組み基礎もっと磨いていこう」と言われた時には、あまりにも地味で落胆する気持ちさえ持つこともあります。

呼吸法、転換、転身、転回、送り足、継足、歩み足…もうできるよ!なんでできるのに毎日やる必要があるのだろう?そう思っていても先生からは求められます。

 

 やはりそれだけ重要なことなのでしょう。基礎というのは技を構成している要素です。逆半身片手取り四方投げを例にすれば、表では最初に足を入れ替える(転身)、踏み込んで前進する(呼吸法)、振り返る(転回)という動作がすべて基礎動作で確認できます。

そして、裏では転換があり、呼吸法と共に転回があります。

基本単独動作をやっているのに、技の中にあるそれらと全然形が変わってしまうことがあります。片手取り転換法の時です。一人ではスムーズに転換動作ができるのに、片手を取られると途端に下を向いてしまい、緊張してしまう。単独動作のときとはまるで違うものになってしまう。先生は常に、「単独動作と同じようにできなければならない」と仰います。基礎レベルというのは技を通じて勝手につくものと思われがちですが、ちゃんと技の中で基礎に向き合い取り組むということが重要だと言えます。技の中に基礎の存在を認識しながら、一つひとつを確認していくことで、技をもっと深掘りしていくことができる訳ですね。

技の骨格にしっかりと取り組んでいけば、技一つひとつの完成度が増していきます。技の種類を増やしていく取り組みというのはキリがありません。それはそれで面白い訳ですが、考えようによってはそのことだけに一生懸命になってしまい、肝心な技の完成度を疎かにしてしまいます。自分の知っている技に更に磨きをかけていくことは、自分ひとりでも取り組むことができ、昨日できなかったことが今日できるようになっていく喜びがあり、技の完成度、美しさも増していきます。技の骨格に取り組むことで自分の課題をより具体化し、稽古に集中することができるようになり、結果的に上達の近道になってくるのではないでしょうか。

 

 

 

11月13日稽古の様子

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新宿合気会web 6号 「今こそ稽古の仕方を考えよう①」

 新型コロナウィルスに端を発したこの世界中の稽古中断は、合気道歴史の中でも先の大戦以降では初めてのことであり、稽古ができないだけではなく、ライフスタイルやワークスタイルにも変更が余儀なくされました。そんな中、いよいよ10月2日から試験的稽古再開となりました。

 

 「稽古」という言葉は、「昔を考える」「古(いにしえ)を稽(かんが)える」という意味があります。稽古の方法自体もここは習ってみる必要があります。指導員の話を聞くところによると、昔の稽古では「喋ってはならない」という暗黙のルールがありました。喋っている余裕があるならば体を動かせ、言葉に頼らず体を動かして体で覚えろ、と言うような教えがあったそうです。

また喋らないということは、「口を閉じる」ということでもあり、口を閉じろという教えもありました。口を開けていると万一当て身が入ったり、受身を取った際に下を噛んでしまうためだそうです。そして稽古は基礎動作、体の変更、基本技から徐々に強度を上げていくので、最初は静かに、そして技の一つ一つはじっくりと練り合って確認をしながら行うということです。口は閉じ、稽古中は会話もせず、黙々と静かに動作の一つ一つを確認し合いながら練り合っていくのが本来の稽古方法なのであれば、これは飛沫感染防止という意味においても有用であり、是非とも昔に習い取り組むべきことではないでしょうか。

試験的稽古再開においてはマスクを着用し行われますが、マスクをすることで逆に喋らなくなるという効果の声もありました。

今後とも技に向き合いじっくりと稽古をしていきましょう。

  

試験的稽古再開稽古の様子:

マスクを着用しています。

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  間隔を開けて行います。

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新宿合気会web 5号 「試験的稽古再開」

新型コロナウィルスにより長く稽古を中断していましたが、このたび試験的稽古再開を迎えることになりました。令和2年10月2日、第一回目の試験的稽古再開を果たすこととなりましたので、ご報告させていただきたいと申します。

 

19時20分

新宿スポーツセンターロビー集合

ひとり一人過去14日分の検温記録の確認、当日の検温を実施。

スポーツセンターロビーにはベンチが撤去されており、また受付には体温自動検知システムが設けられていました。

今日は10名の事前申し込みがありましたが、9名集まり全員で武道場に移動します。

 

更衣室も利用時間帯ごとに使用できるロッカーが決まっており、1列ごとに使用できないように養生テープが貼られています。またシャワーも使用できません。貼り紙だらけで物々しい様子に会員一同驚きを隠せません。

着替え終わったら、うがいとアルコール消毒をしてから道場に入場します。

もちろんマスクも着用します。

有段者は道場内で袴を着装します。

 

道場内では、ひとり一人改めて体調確認含めたいくつかのヒアリングがあり、注意事項把握の確認が行われます。

 

19時40分

さぁ久し振りの稽古再開です。

まずは冒頭、長南指導員による試験的稽古再開の主旨説明、注意事項がありました。

その後準備運動があり、基本単独動作を時間割いてじっくりと行っていきます。

受身の稽古も行った時点で、どうやら大半が久々の運動ということもあり既に息が上がりそうでした。ここで5分間の小休憩が設けられました。

 

20時15分

相対稽古が始まります。

まずは逆半身片手取り転換法。稽古は原則3人一組となり、当日中はペアを変えないというルールで行われます。

その後も突きに対する入身動作、片手取り内転換、片手取り外転換などの基礎を確認していきます。

 

20時40分

いよいよ技の稽古です。

今日は逆半身片手取り四方投げです。基礎動作を確認しながらじっくりとゆっくりと稽古を行うように注意がなされます。

その次は片手取り内転換呼吸投げ。これも息が上がるような稽古ではなく、じっくりと行っていきます。

 

最後は座技呼吸法です。

 

21時00分

稽古終了。

稽古後の挨拶は会員一同円になって一回で挨拶をし、個々の体面による挨拶を省略しました。

また指導員含めた有段者の袴は原則自分で畳むことという注意喚起がなされました。

再度各自アルコール消毒をし終了となりました。

 

所感

いろいろな制約がある中で、これほどまでか?というくらいのルールが設けられ稽古が行われましたが、やはり合気道の稽古は楽しい。体を動かし、畳の上で転がることの喜び、仲間との再会、毎週の楽しみが始まったのは何よりも嬉しいものです。

マスクをつけての稽古も当初は違和感でしかありませんでしたが、会員の中には、「マスクをすることで逆に稽古中に喋らなくなる」という感想もあり、稽古が集中できるきっかけになっているという新たな発見もありました。

日本で最も人口の多い東京、その最大都市でもある新宿。がんじがらめのルールが設けられているのは致し方ないことですが、そういった環境においても可能な範囲において稽古を行い、また新たな発見を見出していければと思いました。

新宿合気会web 4号 「基礎稽古に終わりはない」

合気道をやり始めると、誰もが似たような稽古の段階を踏みます。

入門したての頃は、基礎動作と受身。それに慣れてきたら一教、四方投げ入身投げなどの基本技。その後に昇給審査制度を知り、次第に審査要綱に応じた技を主として稽古していき、そのまま初段取得まで突き進んでいきます。昇段前後から剣や杖にも興味を持ち始め、多種多様な技と武器技を取得しようとしていきます。

またその間、人によっては本部道場に通い始めたり、講習会に参加したり、またそういったことをきっかけに他道場に仲間ができたりなどして交流も生まれることもあるようですが、動画や各書籍などがきっかけにもなりながら、ともかく更に興味関心が高まり、技の種類を増やしていこうとします。これに関しては、ある一定の段位・レベルまでは誰しも通る通過点であり、そのこと自体は至極自然なことだとは思います。

 

しかし、ある時から、「やはり基礎が重要なんだ」ということに気付かなければならないと思います。

私たちはなぜ級位や段位があがっても同じ技を稽古し続けるのでしょうか? そして、そのことに飽きません。この稽古スタイルとそのモチベーションこそ、合気道の特徴であると言えると思います。

 

基礎というのは、初心者だけが取り組むものではありません。

基礎は「習得」するものではなく、「常に磨いていくもの(取り組み続けるもの)」だと言えるでしょう。

例えば、寿司職人がいたとします。新米の職人と、名人・達人の職人では一見すると「動作」は同じかもしれませんが、「所作」は異なり、そして味も当然天と地の差ほど違ってきます。取得した技術は同じかもしれません。しかし名人・達人の職人は技術を磨いてきた年数が違います。握り方、包丁の捌き方一つどれをとっても違っているわけです。

期待して訪ねた寿司屋さんが、ネタの種類は豊富だけど一つ一つが全然おいしくない寿司屋さんと、アレコレ種類はそんなに多くないものの、ある程度の種類がそろっていて、一つ一つがしっかりとした技術の高さを感じる素晴らしい寿司だったとしたら、どちらが良いでしょうか?

 

 

 

合気道の技も同じです。

重要なことは技の種類を増やすことではなく、基礎を磨き、基礎のレベルをあげていくことなのです。

一つ一つの技術にしっかりとした基礎の裏付けを感じる説得力のある技ができるようになっていかなければなりません。

 

そこで基礎の稽古方法についてですが、どのような方法があるのでしょうか。

それは簡単です。

まさに基礎動作を一人でやってみることです。一人でやってみること、そして道場でそのやってきたことを仲間との技の稽古で確認し、そしてまた一人でやってみる、また相手と技の中で確認していく。その繰り返しです。

 

実はこの過程が重要で、どのような稽古をしたらよいのか、自分で考えながら稽古内容を設計していくということが大切なのです。自分で考えることができるようになれば、先輩や指導員からの助言待ちではなく、主体的な稽古ができるようになるので、常に前のめりな姿勢で稽古できるため、充実さは変わってきます。

 

自分で稽古内容を設計する上で重要なことは、常に基礎に帰るということです。応用というのはいきなり目指すものでは無く、基礎の延長線上にあります。求める場所を常に原点である基礎に置きましょう。また基礎を重視すると、初心者や後輩との稽古もより充実するようになります。なぜならば、同じことに取り組むからです。だから誰とやっても楽しさを感じられるようになるのです。

 

今、新宿合気会会員向け動画がアップロードされています。新型コロナウィルスによる影響で稽古が中断している中、自宅でできる稽古として、長南指導員の指導が動画で見ることができます。是非確認をし、自宅でも取り組み、興味関心を維持しつつ稽古再開を心待ちにしていきましょう。

 

※動画は新宿合気会ホームページのトップページにURLを確認することができます。

新宿合気会web 3号 「人と争わないということは」

道場には、色々な動機で稽古を続けている方がいます。

合気道は「争わない」とよく言われます。その表現は技術的な意味で用いられることが多いようです。そして、そこには試合形式を取らないという意味も含まれています。

確かに日頃の稽古では、いかに無駄な力を用いずに相手との調和において技を行うかを考えながら稽古をしていますので、この「争わない」というキーワードは重要なテーマであると言えます。

しかし、人と争わないというのはもう一つの側面を持っているようです。実は、これが長く合気道と付き合っていく上では重要な点であると言えます。

 

それは、ライバルを作らないということです。

合気道を始めた時には、同期やすぐ近くの先輩や後輩がいるものです。そして互いに切磋琢磨して、とにかく一つの目標である初段を目指して、稽古日数を落とさずに、最短での昇段を目指して稽古に夢中になりがちです。そのこと自体はとても良いことです。

しかし、ちょっとしたことをきっかけに、たまたま仕事や他の用事が忙しくて稽古に参加できなくなってしまい、そうこうしているうちに後輩に昇級昇段が抜かれてしまった、自分だけ級位が遅れてしまった…という状況になることがあります。

そんな時、何となくモチベーションが下がり、稽古に行きたくない気持ちになってしまいます。本当は合気道が好きなのに…です。

 

こんな時こそ、合気道の特徴である、「人と争わない」を思い出すことが重要なのです。

私たちは何のために稽古をして、級位や段位を上げていくのでしょうか? 合気道を始めた時から昇級昇段のレースに参加しているのでしょうか? 違うと思います。自分のために稽古を始めたのだと思います。

ですから、人と級位段位の取得スピードを争っている訳ではありません。自分のできるペースで、自分で掲げた目標に従って稽古をやっているのであって、他人とは争っていません。強いて言えば、競争相手は自分ではないでしょうか?「己に勝つ」とよく言いますが、まさに稽古を通じて自分に打ち克つ、己に勝つというところに真の自己形成としての合気道を取り組む価値があるのだと思います。

 

私たちの道場では、そのようにマイペースで、けれども稽古に来た時には最善を尽くし、一生懸命に稽古されている方を目にします。

 

今、新型コロナウィルスの影響で道場での稽古ができない状況です。

稽古再開になった際には、是非また気持ちを新たにして皆さんで稽古をしていきましょう。

これまで継続的に稽古していた方も、ちょっと何らかの理由で稽古に参加できなかった方も一緒になって気持ちを新たにしていきましょう。

 

稽古ができない期間、そんな合気道への取り組み方や、自分の気持ちの整理などに時間を費やすのも有効かもしれませんね。